
転職サイトを見ていると、「未経験OK」「未経験歓迎」と書かれた営業職の求人を多く見かけます。特に目立つのが不動産業と保険業です。一見すると「経験がなくてもチャンスがある業界」に見えますが、実はこの2業種には共通する特徴があります。それは、常に求人を出している=人が定着しにくい構造的な理由があるということです。
この記事では、営業未経験の方になぜ不動産業と保険業をおすすめしないのかを、求人の裏側や実際の働き方を踏まえて詳しく解説します。
なぜ「未経験OK」の求人が多いのか?
転職活動をしていると、似たような求人を複数の転職サイトやエージェントで見かけた経験はありませんか?同じ企業が何度も募集していると、「この会社、そんなに人が辞めているのでは?」と感じる方も多いでしょう。
実際に、不動産業や保険業では高い離職率が慢性化しており、常に新しい人材を採用し続ける構造になっています。
- 成果主義が強く、数字を出せない人が短期間で離職
- 教育・フォローよりも「とにかく現場で覚えろ」スタイル
- 入社しても1年以内に半数以上が退職する企業も珍しくない
つまり、「未経験OK」と書かれていても、教育体制が整っているとは限らないのが現実です。
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おすすめしない業種①:不動産業
成果主義が強く、数字がすべて
不動産営業の世界は、契約=成果=報酬です。営業成績がすべてであり、契約が取れないと評価も給与も上がりません。未経験者が入社しても、数ヶ月で成果が出せなければ厳しい評価を受ける環境が多いのが実情です。
特に賃貸営業や売買仲介では、「売れなければ給料が安い」「結果がすべて」という空気が強く、数字に追われる日々が続きます。そのため、モチベーションを維持するのが難しく、精神的にも疲弊しやすいのです。
「未経験OK」の裏にある実態
不動産業界が常に求人を出している理由のひとつが、入れ替わりの激しさです。企業側は「経験不問」として間口を広げることで、まずは応募数を増やします。しかし、入社後に厳しいノルマや歩合制度に直面し、短期間で退職する人が後を絶ちません。
中には、固定給が低く歩合給が中心の会社もあります。営業経験がない人が成果を出す前に生活が苦しくなり、やむを得ず辞めてしまうケースも多いのです。
専門知識と法的理解が求められる
不動産営業では、宅建業法・契約書・登記・税制などの専門知識が不可欠です。お客様の人生に関わる高額な取引を扱うため、信頼を得るには法律知識や誠実な対応が欠かせません。
しかし、未経験でこれらを短期間に習得するのは簡単ではありません。売上プレッシャーと学習の両立に苦しむケースも多く、ここが離職の大きな原因になります。
労働環境にも注意
不動産営業はお客様の都合に合わせる仕事。土日・祝日・夜間対応が当たり前の企業もあり、プライベートの時間が取りづらい傾向にあります。
また、繁忙期には月100時間を超える残業が発生する会社も存在します。
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不動産営業を検討するなら
それでも挑戦したい場合は、以下の条件を満たす企業を選びましょう。
- 固定給+歩合制で、固定部分がしっかりある
- 新人研修やOJTが体系的に整備されている
- 飛び込みやテレアポ中心ではなく、紹介・反響型の営業
- 宅地建物取引士(宅建)の取得支援制度がある
このような環境であれば、未経験者でも成長のチャンスがあります。
おすすめしない業種②:保険業
信頼がすべての“無形商材”
保険営業は、形のない「安心」を売る仕事です。つまり、商品そのものより営業担当者への信頼が契約に直結します。未経験者にとって、この信頼を築くには時間がかかり、最初の1年は契約が取れずに苦労することも珍しくありません。
紹介営業に依存しがち
多くの保険会社では、まず家族・友人・知人への提案からスタートします。これが「身内営業」と呼ばれるものです。
しかし、これが精神的に最も疲れる部分でもあります。人間関係に気を使い、断られて関係が悪化することも少なくありません。
実際、「最初の半年で紹介先が尽きてしまい、そのまま退職」というケースは業界でもよく聞かれます。
ノルマ・プレッシャー・収入変動
保険営業には、契約件数・新規獲得・維持率など明確な数字目標があります。契約が減ると給与も減るため、常にプレッシャーの中で働くことになります。
成果型報酬の仕組みが多く、安定収入を得るには数年かけて顧客基盤を築く必要があります。そのため、営業未経験者には継続が最も難しい業界とも言われています。
「未経験歓迎」の裏には人材回転率
保険業界が常に「未経験OK」として募集をかけるのは、採用人数で母数を稼ぐ戦略です。
「10人入社して1人残ればいい」と考える会社もあり、離職率が高い分だけ求人も常に出続けています。
挑戦するならここを見極める
保険業に興味があるなら、以下のポイントをチェックしましょう。
- 固定給が一定期間保証されるか
- 紹介営業以外の新規開拓ルートがあるか
- 研修・同行・メンター制度が整っているか
- 無理な勧誘を強要しない企業文化があるか
これらを確認せずに「未経験OK」という言葉だけで入社すると、後悔する可能性が高いです。
なぜこの2業種は“常に求人がある”のか
ここまで見てきたように、不動産業と保険業が常に求人を出している背景には以下の理由があります。
- 離職率が高く、常に人を補充しなければならない
- 成果主義が強く、教育よりも即戦力重視
- 未経験者を大量採用して実績を上げた人だけを残す構造
これは決して「悪い会社」という意味ではありませんが、営業職未経験の40代が長期的に働ける環境ではないことが多いのです。
BtoCの営業は実は難易度が高い
これは個人的な考えではありますが、営業職においてBtoC(一般顧客向け)営業は、BtoB(企業向け)営業よりも難易度は高いと思っています。
※アパレルなどの店頭での販売員(BtoC)も営業職という見れますが、この場合の営業職とは外販(外に出て売りに出る)営業スタイルのことです。百貨店の外商もその一つになります。
特定の顧客を持って安定した売上げを作っていくには100件~数100件の顧客が必要になると思います。そうでない場合は基本的に新規営業をして顧客を自分で作っていく必要があります。
- 不動産も保険も基本的に新規開拓型営業
- しかもBtoCが中心になるので件数も必要
営業未経験者が選ぶべき業種とは?
営業職が初めての方におすすめなのは、教育体制が整い、扱う商材が理解しやすい業界です。例えば以下のような業種があります。
- 人材サービス業界:法人営業中心で提案の型が明確
- メーカー・商社のルート営業:既存顧客が中心で関係構築型
- IT・広告系の法人営業:顧客課題を解決する提案型
これらの業界では「営業の基礎力」を磨けるため、次の転職にもつながります。IT・広告系は無形商材になるため難易度は高めで、若い方向けのポテンシャル採用が多い印象です。
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まとめ:求人の数より“働ける環境”を見極めよう
「未経験OK」「高収入可」「研修充実」と書かれた求人でも、その裏にある仕組みを理解することが大切です。
とくに、不動産業や保険業は営業の中でもハードルが高く、成果主義のプレッシャーと専門知識の壁が同時に立ちはだかります。
営業職は決して「誰でもできる仕事」ではありませんが、環境とやり方を選べば誰でも成長できる仕事です。
焦らず、自分に合った業界・商材・営業スタイルを見極め、長く続けられるキャリアを築きましょう。
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